草津温泉

Kusatsu

ここ数年いろいろ温泉巡りの旅をしてきたが、とりあえず今回がその旅の集大成だ。天下の名湯草津温泉。日本三名泉のひとつ。下呂、有馬と行って、最後に残ったのは草津温泉。先月も万座と伊香保温泉に行ったばかりだが、草津温泉は行かずにとっておいた。やはり特別なものだ。

草津温泉に入ったとたん車内にはかすかに硫黄臭が漂う。さすがだ。誰しも行かずとも写真などで見たことがある草津温泉のシンボル湯畑。すごいだろうと思っていても実際に見て改めてそのすごさが分かる。絶え間なく流れ落ちる大量の源泉。もうもうと上がる湯けむり。何もかも圧倒される。

ホテルはその湯畑前に位置する大東館。そのホテルの温泉と、外湯を4つ堪能した。外湯は白旗の湯、千代の湯、煮川の湯、地蔵の湯。千代の湯は湯畑源泉を引いている以外はそれぞれ独自の源泉を持つ。それぞれ視覚的に透明だったりやや白濁していたり、また臭覚的に硫黄臭がきつかったり、そうでなかったり、また温度的には強烈に熱かったり、それほどでもなかったりと、微妙に違いが楽しめた。

湯畑を中心に大小様々なホテルが乱立している中、このような小さな公衆浴場が町中に点在しており、観光客と地元の人が気軽に利用している湯の文化が見事に共存していた。有馬温泉伊香保温泉がいかにも一大観光地となっているが、草津温泉はいかに巨大な温泉観光地となっていようとも、地元の人たちの日常の身近な温泉との生活が自然と保たれているのはとても感心した。部屋の窓から見える湯畑。何度見てもいつまで経ってももうもうと上がり続ける湯けむりの異様な光景に圧倒される中、その湯畑の横を朝ランドセルを背負った小学生たちが通学する光景は今までに見たことのない不思議な感情を抱く。それは草津温泉がいつの時代も日本人を魅了するひとつの理由かもしれない。

その日は小雪が舞い散る寒い日だったが、草津温泉の熱い湯が体を芯から温め、浴衣の薄着でも外湯巡りを楽しめた。観光客と地元の人たちの共存がほんとにすばらしく感じた。立派なホテルや旅館、大きなお風呂はどこにでもあるが、気軽に数ある公衆浴場を無料で利用させていただく文化は草津温泉が天下の名湯といわれるゆえんだ。

もちろん、湯も申し分ない。硫黄臭に肌の弱い部分にピリピリと刺激ある強酸性泉は全ての細菌を死滅させるという。目に入れると痛くて開けられないくらいだ。肌はすべすべ。普段いろいろな温泉に入るが、決して温泉の効能は信じていない。あくまでプラシーボ効果、癒しでしかないと思っているが、草津温泉ほどの湯になると話は別だ。皮膚病も治る、肌もツルツルになる、あらゆる効能を期待してしまう。

あらゆる場所を掘れば湯が湧き出るという驚異の草津温泉。今回の初めての訪問だけではまだまだ足りない。これからきっと草津温泉通いが始まるだろう。日本三名泉、日本三古湯、三大美人湯・・・、車で行ける日本の有名温泉地はかなり巡ることが出来た。今回最終目的地、集大成の草津温泉でとりあえず一区切りとなるが、その強烈な温泉力はしばらく私をはるばる群馬県に引き寄せる恐ろしい天下の名湯だ。今まである意味ひたすら数を求め記録に頼った温泉の旅だったが、これから湯質にこだわるまた新しい温泉の旅が始まるような気がする。