山口湯巡りの旅 「俵山温泉」

Tawarayama

湯本温泉のお湯をすぐに洗い落とすのはあまりにもったいないが、長門湯本温泉からすぐそのまま山手の俵山温泉に向かった。クルマで約15分くらい、急に細い道の集落の中に入るとそこが俵山温泉。公衆浴場「白猿の湯」や「町の湯」の手作りの小さい看板があるくらいで、湯本温泉とは違い大きなホテルのような建物はなく温泉街という雰囲気ではない。昔の細い通りに古い町並みがあるとても素朴な村といった感じだ。
この俵山温泉、小さな旅館が建ち並ぶが、それぞれは旅館内に温泉施設は持っていないようだ。あくまで泊まり客には公衆浴場に行ってもらう。温泉のない小さくて静かな旅館にのんびりして、外湯に出掛ける。そんな毎日を数ヶ月から1年くらい過ごし体を癒す。まさに湯治の温泉場だそうだ。
その俵山温泉の肝たる公衆浴場。「白猿の湯」も「町の湯」もどちらも意外にも新しくきれいな建物で、充実していた。今回利用したのは「町の湯」の方。この町の人たちで協力して管理しているのだろうか。入るなり愛想の良い番台さんがロビーにある飲湯コーナーへ勧める。飲むことができるのだ。コップを口に近づけると思っても見なかった硫黄臭がほんのりと。少し驚いた。山口の温泉でもこんな硫黄の臭いのお湯があるとは。少し飲んでみるととてもまずくて飲めたものではないが、”良薬口に苦し”、相当体に効くような感じがする。
源泉掛け流しのお湯は湯本温泉同様とても柔らかく、硫黄の臭いがほんのりする。草津や万座の強烈な硫黄臭とは違う。火山性の刺激ある湯とは正反対のアルカリ性の優しいお湯だ。硫黄臭自体もなんだか甘い感じがする。今までにあまり経験のないお湯でちょっと不思議な気がした。なんだか大げさな表現だが、このお湯に入ると包まれるような優しくて安心感があるのだ。湯温は湯本温泉のようにぬるくなく、熱くもなくぬるくもなくちょうど良い。俵山温泉が湯治場として有名なのはなるほどという気がする。
もし私も心身共にひどく荒れてしまったら、ここに訪れ長期滞在できたらとても幸せだろう。
湯本温泉だけ入って、広島に戻ろうと思っていたが、せっかくだからと俵山温泉に寄ってみて本当に良かった。とても良い温泉地だった。