那智勝浦温泉 ホテル浦島「忘帰洞」

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関西の年配の人には誰もが知っている和歌山は那智勝浦温泉のホテル浦島。巨大な海がすぐそばの洞窟風呂が全国的にもあまりに知られた有名なホテルである。僕もその名前は聞いたことがあるくらいだ。

この3連休の真ん中に日帰りで紀伊半島一周ドライブに出掛けた。メインは那智勝浦温泉。有名な「那智の滝」は何度か訪れたことがあるが、関西でも5本の指に入るであろう那智勝浦温泉の湯にはつかった事がない。

今回、那智勝浦温泉はそのホテル浦島にて温泉を初体験することになったのだが、噂には聞いていたが、ほんとうに驚きの連続。まず、ホテルには海を挟んで対岸にあり、船で行かねばならない。亀の形をしたいかにもな船で島の岸沿いに広大に広がるホテル浦島に向かう。もうかなり古く寂れている感もあるが、あまりに巨大なホテル。昔の栄華が忍ばれる。館内にはなんと6つもの浴場があり、移動するのも大変なくらい広大だ。今回はまずはということで有名な忘帰洞の湯を利用した。入るなり今まで体験したことのない巨大な洞窟をくりぬいた異様な空間に、硫黄臭漂う白濁した湯船が大小10近くも点在している。目の前には外洋黒潮の海が広がり、圧倒的な光景といかにも効用ありそうな湯けむりの臭いは誰しも驚くくらいのインパクトがある。

かなり熱めの白濁した硫黄泉に浸かる。その日は寒かったこともあり、体には痛いほど熱い。泉質は「含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物泉」とあるが、その”含硫黄”の含むはかなりの量だと思われる。硫黄泉だけに空気に触れて白濁したのだろうか、関西の有名温泉地で硫黄泉や硫黄臭のする温泉は例えば十津川や湯の峰などいくつか体験したことがあるが、これほどの強烈な硫黄泉は知らない。万座温泉とまではいかなくても、草津温泉に匹敵するくらいの硫黄泉だと感じだ。ただ、草津温泉のようなきつい酸性ではないので、それほど肌にもきつくなく、むしろやさしい。10近くある湯船に源泉が掛け流しされている。他にも5つの浴場が同ホテルに点在しているというのだから、ものすごい湧出量だ。

日帰り入浴料は最初¥1000とけっして安くないと感じたが、行き帰りの船での送迎、どこにも無いような忘帰洞の洞窟風呂を体験できるのであれば高くないどころか、さらにそれ以外にもまだ5つも浴場があり自由に湯巡りできるのだから、むしろ圧倒的に安い日帰り入浴料だと言える。一日このホテルでゆっくり温泉が楽しめる。

日本には数え切れない温泉地がある。例えば私の知る範囲で草津や別所、諏訪のような気楽で素朴な公衆浴場の温泉もまたすばらしいが、このようなホテル浦島の名物「忘帰洞」は素朴とは逆で、またそれは日本の温泉の究極の形の一つだと思う。初めての那智勝浦温泉はそのスケールの大きさに圧倒されることになった。また近いうちにこのホテルの他の浴場も巡ってみたいし、他のホテル、そして公衆浴場も訪れてみたい。