ヤードバーズ 「Roger The Engineer」

Yardbirds

誰しも例えばオーディオシステムを変更したらまずその音色を視聴する決まった盤があるはずだ。アンプにしろ、スピーカーにしろ、プレイヤーにしろ、買い換えて、どれほど音が違うかわくわくして試してみる。その時に鳴らすCDなりレコードはお気に入りで聴き慣れただけでなく、楽曲的に基準を持ちやすいマテリアルでなければならない。

私の場合は、それはヤードバーズのロジャーのエンジニアだったりする。60年代の古いアルバムなので、音質的に決して適してるとは言えないが、意外と音が良い。何より大切なのは1曲目にオーディオの性能をはっきりつかめやすい楽曲だということだ。「Lost Woman」は染み入るような鋭いシンバルのカウントから始まり、ジャズ的なベースがたたみかけ、そしてジェフ・ベックの切れ味鋭いギターカッティングがそのアルバムの始まりを告げる。始まりから個々の楽器が独立していて、粒立ちが良いから、オーディオの比較がしやすい。その後もジェフ・ベック時代の多彩なヤードバーズのサウンドが堪能できて、ヤードバーズ屈指のアルバムなので、最高だ。まして、後半はジミー・ペイジとのツインギター曲も含まれているから、音楽好きにはたまらない。早くもレッド・ツェッペリン的なヘビーなサウンドは思わずにやりとさせられる。

エリック・クラプトン時代のポップなヤードバーズ(それが嫌でクラプトンはバンド脱退に至る)、実験的で多彩なサウンドを楽しめるジェフベック時代のヤードバーズ(一般にヤードバーズの絶頂期)、すでにスタジオミュージシャンで凄腕のほぼバンド乗っ取り状態のジミー・ペイジ時代のヤードバーズ(すでにレッド・ツェッペリンサウンド)。ヤードバーズは一般に3大ギタリストが在籍していたという史実でしか語られないバンドであるが、マニアライクないつの時代も聴きがいあるバンドだ。ポップ、ロック、そしてブルーズもすばらしい。クラプトンが嫌った「Heartfull of soul」も大好きだ。若きジェフ・ベックが早くも孤高の天才的ギターを縦横無尽に奔らせた「Jeff's Boogle」、ベックとペイジの歴史的なツインギター「Stroll on」はロック好きにはたまらない。「NewYork City Blues」や「The Nazz are Blue」などのブルーズもすばらしい。これほど多彩なバンドはなかなか無い。

単に、3大ギタリストが在籍していたというだけではすまされない。それぞれの若き個性がその時代ごとにしっかり出ていて、多彩なサウンドが楽しめるのはヤードバーズならでは。

私のオーディオシステムの試聴盤であるが、もちろんどのアルバムもしっかり聴き入る愛聴盤である。