黒川温泉

大分の長湯温泉を後にして、世界的なカルデラ火山を有する熊本の阿蘇へと向かった。初めての阿蘇山では外輪山を含めた初めて見る自然のスケールに圧倒されてしまった。阿蘇中岳はモクモクと有毒ガスを含む噴煙を上げている。世界でも有数の巨大カルデラ活火山の火口にこんなに近づいて見るのはそうそう経験できない貴重なものだった。

Asozan

そんな強烈な活火山の温泉を堪能しに”すずめの湯”で有名な地獄温泉に行くつもりだったが、有毒ガスの風向きが悪く、道が通行止めになったため、黒川温泉に向かうことにした。

阿蘇の外輪山を抜け、草原が続く山道からやや険しい山間をぬって行くと、そこがかの有名な黒川温泉。仕掛け人(プロデューサー)によって温泉街全体で復興に取り組み、見事に復活してTVでも大々的に取り上げられた。今では女性に人気NO.1とも言われる温泉地で、僕もかなり訪れるのを楽しみにしていた。まず着いて感じたのが雰囲気的に長野の白骨温泉にとても似ていることだ。秘境ムード満点で、山深く狭い場所に川を挟んで点在する様は白骨温泉によく似ている(白骨温泉ほどは道中険しくないけれど)。建物など温泉街全体がデザイン的に統一されていて、なんだかレトロだけど新しいような、それぞれの旅館が一斉に思い切った投資(懸け)をしたわけで、それを考えるとすごい規模だ。とにかく、浴衣を着てそぞろ歩きしたい雰囲気抜群なのが一番。そして泊まり客だけで無く、日帰り客にも楽しめるような気軽な湯巡りのシステムが統一されていて、いろんな温泉地に訪れた僕でも、これほどサービス精神のある温泉地は初めて。

Kurokawa
利用できる数ある温泉施設(旅館)の中で、今回とりあえず利用した温泉は和風旅館「美里」さんの露天風呂。自然に囲まれた静かな露天風呂はほんのり硫黄の香りと湯ノ花が漂ういかにも山のお湯といった感じ。時間帯や日によって濁り具合が変わるらしい。岐阜の平湯温泉「神の湯」に似た湯質と雰囲気で、とても満足だった。

こんなすばらしい露天風呂が黒川温泉には他にもたくさんある。泉質の種類もいろいろあり、また公衆浴場もちゃんとあって、温泉好きなら天国のような場所だ。そぞろ歩きにはスイーツやしゃれたお店がたくさんあり、女性に人気なのがよく分かる。

雄大で強烈な阿蘇の自然が生み出した温泉にあって、とても落ち着いた雰囲気の温泉街へプロデュースされた黒川温泉。とにかく、ここは一度は泊まりで利用したい温泉。もちろん、温泉地はどこも本来ゆっくり泊まって過ごすのが本道なのだけど、これほどまでにゆっくり湯巡り、そぞろ歩きしたい温泉地は東の草津、西の黒川温泉と言ってもいいのではないだろうか。