ボウモアとラフロイグ アイラモルト

PcnmkjcsISLAY”と書いて”アイラ”と発音する。イギリス、スコットランドアイルランドの中間に位置する小さな島の名前だ。一見するとさびれた小さな島なのだが、ここは世界のスコッチウイスキーファンを虜にするアイラモルトウイスキーの島なのだ。島にはいくつか代表的なウイスキー蒸留所が点在する。その内のBOWMOREボウモアとLAPHLOAIGラフロイグは日本でも大変有名だ。一般にアイラモルトと言われるこの島で作られるシングルモルトウイスキーは強烈なピートの香りと味が特徴なのだ。ウイスキーの製造工程で、麦芽を乾燥させる際、植物性燃料であるピート(主にスコットランドで採れるコケの一種)を焚く時に付く臭いがウイスキーに独特な個性を与える。それは、例えば海の塩の臭いを感じさせたり、草の生々しい臭い、薬品の臭い、焦げたスモークの臭い・・・、など独特でいくつもの臭いが重なり、また味もそれを感じさせるものだ。これは人によってかなり好き嫌いが分かれる。嫌いな人はウイスキー自体が嫌いになりかねない、逆に好きな人には瞬く間にウイスキーの虜にしてしまう。私はまさに後者なのだが、少なくともウイスキー初心者はこのアイラモルトを一番最初に飲んではいけない。下手をすると一生ウイスキーを受け付けなくなる恐れがある。最初はジャパニーズモルトで入り、次にバーボンか飲みやすいスコッチを選び、そして最後にややピートの強めなスコッチで試してみればいい。スコッチが気に入ればアイラモルト(アイラモルトもスコッチである。極端なスコッチだと思う)を気に入る可能性がある。
そのアイラモルトの代表的な銘柄がボウモアラフロイグ。私の家のバーには常にスタンダードなボウモア12年をストックしている。ボウモアはピートの香りが飾り気なくストレートに出ている。かなり野性的というか、乾燥したピートが生々しい。人は”歯医者の臭い”とも言うが、それをイメージしてもらって間違いない。対してラフロイグ。こちらはボウモアと違って、品があるというか、ピートの香りが甘く刺々しくない。濃厚で上品だ。イギリスのチャールズ皇太子が愛飲するモルトらしいが、王室御用達らしく品が感じられる。なので、私は外に飲みに行くと必ずラフロイグ10年を注文するのが楽しみだ。普段家ではボウモア、そしてたまにラフロイグを飲むのが良い。まれに、ラフロイグの15年を飲む機会があるが、それはそれはさらに重厚で品が高い。通常は10年で充分だが、15年は強烈だ。
アイラモルトは人を虜にする魔力がある。興味を持たれたらぜひ村上春樹の著書「もし僕らの言葉がウイスキーであったなら」をお勧めする。日本で最もノーベル文学賞に近いと言われる有名な著者もまたアイラモルトに魅せられた一人。アイラに自ら訪れアイラの魅力を記したこの本はお薦めだ。